TOEIC800点取得必須の大手IT企業にてTOEIC講師、学習カウンセラー、研修企画・運営を担当しているセレンです。自分自身も1年かけてTOEIC600点を取得したところからスタートし、国内独学で満点までたどり着くことができました。
TOEICという試験における最大の壁のひとつは、800点ではないでしょうか?600点までは自力で来れたけど、そこから伸びない……という方は非常に多くいらっしゃいます。
800点の壁はなぜ存在するのでしょうか?
ざっくりとした言い方をすると、何となくの理解では答えられない問題が2割ほど確実に存在する、ということなのです。問題の難易度が上がれば上がるほど、具体的で詳細な情報をキャッチする力が必要となります。
600点は取れるけど800点台に到達しないという方の課題は、一言でいうと「あいまいな理解で止まっている」ところにあります。
本記事ではその800点の壁を突破すべく、3ヶ月で到達可能なカリキュラムや具体的な学習法をお伝えいたします。
800点を取得したい今600点台の方も、いずれ800点を取得できればいいなと考えている方もぜひ読んでみて下さい。そしていつか来るその日のために、ぜひブックマークしておいてください。
この記事を書いた人
セレン
留学経験、海外経験ゼロから31歳で英語学習を独学で開始しTOEIC LR満点、TOEICスピーキング満点、英検1級を取得。日本最大手IT企業にてTOEIC研修&英語学習カウンセリングを6年間担当。英語事業コンサルティング、高校生英語指導も行う。「英語のあたらしい読みかた」著者。
600点台から3ヶ月でTOEIC800点を取得することは可能か?
結論からいうと可能です。ただし、かなりの覚悟が必要なことは先にお伝えしておきます。
学習時間の目安で言うと平日約3時間、休日で5~7時間ほどの学習が必要になるかと思います。もちろん、学習時間というのは様々な要素が絡み合うものなので、あくまで大まかな参考としてとどめておいてください。
また3ヵ月で600点から200点アップさせる際の条件としては
- 1. 基礎文法がほぼ理解できている
- 2. 語彙力が4,000語習得済のレベルに達している
- 3. 母音、子音の基礎発音が理解できている
この3つが大変重要となります。
ここでいう基礎文法の理解とは、中学英文法から高校1年生くらいまでの英文法を指し、完了形、To不定詞、関係代名詞などの基本が理解できている状態を意味します。疑問文ってどう作るんだっけ?受動態ってなんだっけ?というレベルからでは3ヶ月で800点の取得は現実的にはかなり難しくなります。着実に100点アップを目指すほうが安全かもしれません。
また語彙力に関しては語彙力診断サイトなどを使って、大まかなご自身の語彙力を測ることもできるのでやってみてください。目安としてはTOEIC公式問題集を手に取ってみて、Part3、4、7の設問が正しく読めて理解できるレベルの語彙力があれば非常に安心です。
発音に関しては、英語の基礎となる子音と母音はある程度理解できている状態が好ましいです。基礎発音の理解はリスニングに影響するばかりでなく、学習のコアとなる音読の精度にも大きく影響します。発音入門サイトなどを利用して、聞けば判別できるレベルになっておけるとよいでしょう。
発音は声に出して対象となる音をマネし、出してみるように練習してみてください。完璧に再現できることよりは、まずは聞いて理解できるレベルを目指しましょう。
この3つの条件が揃っていることに加え、効果的な学習法の正しいノウハウが身に付き、目標達成までカリキュラムを実行する継続力があれば、800点の取得は一気に近づいてきます。
参考:TOEIC800点ってすごいの?レベル・難易度、必要な勉強時間を解説
600点台から3ヶ月でTOEIC800を狙うマインドセット
800点を3ヶ月で狙うことの難しさは、苦手箇所の明確な発見や克服、学習量の確保、そして学習の継続など様々です。ただ、まずは大前提として、心にとどめておいていただきたいマインドセットを3つ紹介いたします。
- 反復練習から逃げない。
- 効果測定を定期的に行う
- 語彙不足というハンデを負わない
この3つです。
1. 反復練習から逃げない
語学の上達は質と量の相互作用で成り立っています。質を上げれば量が減る、量を増やせば質が下がる、このトレードオフの均衡の中でバランスを取りながら、質と量の両方を上げていく必要があります。
質を高めるために効果的な反復練習は避けては通れません。同じパッセージを何度も音読する、同じスクリプトを繰り返し読むという反復練習を面倒くさいと逃げてしまわないようにしましょう。
バットの素振りのように繰り返すことで効果が生まれるトレーニングだと認識し、コツコツと実行していく姿勢がとても大切です。
2. 効果測定を定期的に行う
また学習の成果を定期的に測る必要もあります。結果は3ヶ月後の試験結果でわかるからいいか、ではなく、その前に定期的にフル模試などを解いてみて、どのくらい伸びているか、まだどこが足りないかを検知していくことで、現状の課題を明確にすることができます。
最低でも1ヶ月に1回は本番と同じ形式の模試を解き、その時点での実力を測るようにしましょう。学習の計画が順調なのか、ビハインドなのか、常に把握しながら進めることができるからです。
3、語彙不足というハンデを負わない
語彙不足は全ての学習の大敵になるので、しっかりと対策する必要があります。バランスよく各セクションでスコアアップできるよう、語彙が不足したまま3ヶ月後の試験を受けることはなんとしてでも避けなければなりません。
目標は約7,000単語になります。目安としては金のフレーズの600、730レベルに知らない単語がない状態、そして860レベルの単語の7割以上がわかる状態が理想的でしょう。このレベルに1日でも早くたどり着く、という姿勢が欲しいところです。
問題を解いたり復習したりしているうちに自然に覚えられるからいいか、という考え方は数年余裕のある方のアプローチです。3ヶ月しかない中では、語彙不足は1日でも早く脱するマインドセットが大事です。
600点台から3ヶ月でTOEIC800を狙う4つの学習法
ではここからはもう少し細分化して、具体的な学習法を紐解いていきましょう。800点を短期間で狙う際に大切なのは、「4つのカテゴリー」に分ける考え方です。
リスニングがわかるようになってきた、読める箇所が増えてきた、という大枠で理解度を捉えるのではなく、正答率をベースに下記の4つのカテゴリーにおいて、求められている力がついているかどうかを明確に捉えるアプローチです。4つのカテゴリーは
- リスニング短文(Part1、2)
- リスニング長文(Part3、4)
- リーディング短文(Part5)
- リーディング長文 (Part6、7)
になります。
これ以上大きく分けても、細かく分けすぎても学習内容が複雑になってしまうので、800点を狙う際はこの4つで問題ないでしょう。この4つのカテゴリーをベースにどのように課題を判断し、どのような学習を行えば効果的な学習になるかを見ていきます。
1. リスニング短文(Part1、2)
このパートで問われるのは、1文の正確な理解です。語彙力的には、Part1に出てくる語彙としてTOEIC語彙学習必携の金のフレーズなどにまとまっている語彙や、一般的な会話の中で出てくるレベルの語彙力で充分なパートです。単独で見れば最も語彙力が求められていないパートと言うこともできるでしょう。
ただPart2などは聞き取れるか聞き取れないか、がわかりやすいため苦手だと感じている方も多いと思います。Part2でネックになるのは大きく分けて2点です。
1つは単純に聞き取れないという点、もう一つはトリッキーな回答で問題文に対する答えになっているかがわかりにくい問題がある、という点。
両方克服する必要がありますが、後者はTOEICの問題パターンに慣れること、多くの英語での会話を聞き、パターンをストックすることが近道です。
前者の「シンプルに聞き取れない」は、3ヶ月で可能な限り克服する必要がある一つ目の難関です。
ディクテーションをやりこもう
英文を聞き、聞こえた文をノートに書き落とす練習を「ディクテーション」と言います。
これを行うことで、はっきりと聞こえていない箇所がわかるだけでなく、100%の集中力をもって英語に耳を傾けるという姿勢も養われます。Part2の正解率を上げるために避けては通れないトレーニングです。
効果的なオススメのフロー
- まずはPart2の問題を解いてみる。
- 答え合わせをせずに、問題文だけを聞いてディクテーションする
- 3回まで聞き直し、その後スクリプトを確認する
- 聞き取れていない箇所を明確にして、正解の選択肢と合わせてセットで音読
これを行うことで、聞き取れない箇所の克服と、答えを選ぶスキルをまとめて向上することができるので、ぜひやってみましょう。
目安として3ヶ月で200問くらいは取り組みたいところです。Part2は正解できたかどうか、だけではなく問題文が聞き取れているか、をベースに復習をすると力がつきやすくなります。
2. リスニング長文(Part3、4)
Part3、4は問題数も多く、短期間での大幅なスコアアップするためにかなり注力しなければならないパートです。ここでポイントになるのは、
- 2-1. 設問先読みの負荷をいかに減らすか
- 2-2. 本来のリスニング力を100%活かしきる解答フローの確立
- 2-3. 聞く力そのものの向上
この3点です。
2-1. 設問先読みの負荷をいかに減らすか
Part3、4には設問、そして選択肢が存在します。それらを「読む」必要があるため、このパートは2割ほどリーディング力も同時に問われることになります。
いかにこの負荷を減らすかは、地味ながらスコアアップに大きな影響力を持つタスクの一つなのです。
行うことは公式問題集にある設問、選択肢の速読練習です。
設問や選択肢を見れば、一瞬で何を聞かれているかを日本語に落とし込めるくらいまで練習をするのです。公式問題集2冊分(テスト4回分)程度の設問、選択肢の量をしっかり練習できれば充分でしょう。
2-2. 本来のリスニング力を100%活かしきる解答フローの確立
Part3、4の答え方には様々なバリエーションが存在します。これは試験固有のスキルですが、TOEICという試験を受ける以上避けては通れないスキルになります。整理しておくべきなのは
- 先読みの時点で設問+選択肢を読むのか?設問だけを読むか
- 本文を聞きながら解答するか、終わってから解答するか
この2点をフローとして決めておき、そのフローに沿った解き方の練習を行うことが大切です。
日頃の学習の時点で解き方のフローが定まっていないと、本番では解き方がブレてしまい、連続する問題の流れの中でなし崩し的にスコアを下げてしまうことも懸念されます。
最も自分にあった解き方を事前に見つけ、そのやり方で試験までは徹底して練習するのが良いでしょう。
2-3. 聞く力そのものの向上
リスニング力そのものを上げる学習も当然必要です。この課題に関しては音読、そしてシャドーイングがやはり効果的です。音読の際は聞き取れなかった箇所をしっかり意識して読むようにしましょう。
シャドーイングはかなり高度なトレーニングで、聞きながら正しく音が再現できないという方はスクリプトを見ながらシャドーイングを行うパラレルリーディングという方法もあります。
読むことが目的ではなく、聞き取れるようになることが目的であることを忘れず、対象になっている英文がしっかり聞き取れるようになっているか、翌日などに再度聞いてみると良いでしょう。
3. リーディング短文(Part5)
Part5は大きく分けて、文法力を問う問題と語彙力を問う問題があります。まずはこの2つのカテゴリーにおいて、自分がどちらを苦手にしているかを把握することが大切です。
大きなくくりでPart5が苦手、という認識ではここから上を目指すにはやや課題の把握は不明瞭かもしれません。
3-1. 語彙問題の攻略
語彙がまだ足りていないのであれば、この3ヶ月で一気に増やすしかありません。短期間でできるもっとも確実なことは「暗記」です。
語彙に関しては前述した明確な語彙数の目標(約7000語)があるので、そこを期間中に目指しながらPart5の語彙問題を解く中で定着させ、また知らなかった語彙を習得していく必要があります。
語彙問題は、いくら解答に時間をかけようと正答率が変わらないタイプの問題です。いかに試験前に多くの問題を解き、語彙力を上げておくかがカギとなります。
3-2. 品詞・文法問題の攻略
品詞問題、文法問題が苦手という方はやや苦労するかもしれません。単純に増やしていけばよい語彙力の課題とは違い、理解度が求められるため、自分が納得して腑に落ちるまで調べたりする時間が必要になるからです。
ただこちらは語彙の数だけ存在する語彙問題とは違い、問われる知識の範囲はかなり限定的です。間違えた品詞、文法問題は全て問題文ごと覚える、くらいのつもりで克服するとよいでしょう。語彙は星の数ほどあるけれど、文法の数は限られている、ということを頭に入れておくとよいでしょう。
Part5に限らずリーディングの問題すべてに言えることですが、解く際は必ず時間を測って解く習慣を身に付けましょう。
試験で問われる力は「制限時間内」に「解ける」こと、です。この2つの条件が満たされて初めてスコアになるので、日頃からタイムプレッシャーの中で問題に向き合うようにします。
Part5は10〜12分で30問解き終わるペースを目指すとよいです。
4. リーディング長文(Part6、7)
おそらく3ヶ月の中で最大の難関になるのがこのリーディング長文でしょう。なぜならこの量の英文を制限時間内に理解し、読み解いていくという力は幅広いスキルで構成された高度で、かつ総合的な力だからです。
苦手な人が多い、というよりは誰にとっても難しい、と認識しておくのがよいです。3ヶ月で攻略したいポイントは
- 4-1. 制限時間内に解く練習の徹底
- 4-2. 解答フローの確立
- 4-3. 読解力向上のための問題文の復習
上記3つになります。
4-1. 制限時間内に解く練習の徹底
まずはPart6も7も、本番ではどんどんとなくなっていく時間の中で焦りと戦いながら解いていくメンタリティーが求められます。時間があれば解ける、では本番では通用しないのです。
時間がない中で解けないといけないのが試験であり、3ヶ月の中で徹底的に練習する必要があります。時計を見なくても目安の時間をオーバーしたら身体でわかる、そのくらいの完成度を目指したいところです。
まずは全問題、時間を測って解くことを徹底しましょう。
Part6は大問一つ(設問4つ付きの問題の塊)で2分、Part7は設問1つに1分を目安とするとよいでしょう。
そして時間がかかる問題には必ずマークをつけるようにして解きます。後で、時間のかかる要因をつぶしていくための記録になります。
4-2. 解答フローの確立
解答フローに関しては、Part6では文脈によって答えが決まる文脈判断型の問題の攻略がカギになります。選択肢がPart5の語彙問題のように同じ品詞だけど、別の単語が並んでいる問題が文脈判断型の問題で、Part6のみに出題されるやや特殊な問題パターンです。
答えがわからないまま読み進めないといけないので、慣れていないと感覚的に非常に気持ち悪いと感じる方も多いと思います。Delayed Clueと呼ばれる後から答えがわかるパターンや、語彙力が問われるパターンなど、問題のパターンも多いのでしっかりと事前に対策をしておきましょう。
Part7においては本文を全て読む、設問から先に読む、など様々な解き方がありますが、オススメの解き方は設問を一つずつ解いていく方法です。一番初めの設問に目を通し、その答えが見つかったら、2つ目の設問を解くという方法です。
ただ、最も大切なのは自分が解きやすいと思える確実なフローを早い段階で判別し、そのフローを3ヶ月間徹底することです。自信をもって本番に挑める方法をしっかり模索しましょう。
4-3. 読解力向上のための問題文の復習
ただやはり最終的に一番身に付けないといけない力は、根本的な読解力です。そのためには、問題文を精読し、どこを読んでもわかる状態にまで仕上げる力を付けることが必須となります。
「精読」とは、1文1文じっくり読み、わからないところを調べ、読めるように仕上げていく「多読」の反対に位置するアプローチです。読解力向上の学習においてはスラッシュリーディングと音読が学習の軸になってくるでしょう。
スラッシュリーディング&音読のやりかた
- 英文を意味の句切れ目で切って線(スラッシュ)を入れる
- 線と線で挟まれた区間の英語の意味を訳してみる
- 意味が正しく理解できない箇所は日本語訳を確認
- 最後まで行ったら線を消し、止まらずに最初から音読してみる
文の区切り方に絶対的なルールはありません。意味の塊を切るような区切り方(thank you をthank/ you で区切るなど)でなければ、基本的にはコンマ、接続詞、前置詞の前にほとんどの線が入っていることがわかると思います。
文の長さのせい文の理解度が落ちてしまうことを防ぐための練習なので、読みやすいなと思える長さに区切るとよいでしょう。
またスラッシュリーディングはゴールではなく、最終的には全ての線を取り払ったときに読めるようになっていることが理想的です。スラッシュリーディング → 音読という流れを忘れないようにしましょう。
次のページでは、具体的にどのように学習を進めて行くのかをご紹介していきます。
2ページ目の目次
- 600点台から3ヶ月でTOEIC800を狙うために必須の参考書
- 3ヶ月の学習スケジュールの組み立て方
- もし3ヶ月間の間に挫折しそうになったら…
- まとめ
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