転職を目的としてTOEIC学習をしている人は、
TOEIC700点以上を取得すれば転職が有利になる
と耳にしたことがあるのではないでしょうか。ただ「本当に700点を取得する価値があるのだろうか?」と半信半疑の人もいるかもしれません。
転職時にどのくらいのTOEICスコアが求められるかは企業・業種・職種によって異なりますが、700点を英語力を判断する一つの基準としている企業・業種・職種も少なくありません。
本記事ではTOEIC700点取得の転職でのメリットやTOEIC700点取得で有利になる企業・業種・職種、さらには転職時のポイントや注意点などをまとめています。私自身がTOEICスコア930点の取得を一つのアピール材料として、国内企業・外資系企業への転職をおこなった経験を踏まえて解説します。
TOEICスコアを活用して転職を有利に進めたい方は、この記事を参考にTOEIC700点取得時の転職でのメリットを理解し、TOEIC学習へのモチベーションを高めていきましょう。
この記事を書いた人
阿武 夏織
TOEIC930点、英検1級取得。外資系企業、日系企業での海外営業勤務を経たのち渡米し、アトランタでNBAダンサーとして活動。ライターとしてさまざまな英語学習サイトで学習方法に関する記事をはじめ、海外文化・海外旅行についての記事などを執筆中。
この記事を監修した人
セレン
留学経験、海外経験ゼロから31歳で英語学習を独学で開始しTOEIC LR満点、TOEICスピーキング満点、英検1級を取得。日本最大手IT企業にてTOEIC研修&英語学習カウンセリングを6年間担当。英語事業コンサルティング、高校生英語指導も行う。「英語のあたらしい読みかた」著者。
TOEIC700点の評価は?転職時に有利になるのか解説
TOEIC700点を取得しているからといって、どの企業・どのポジションでも転職が有利になるわけではありません。
しかし、国内大手企業を中心に海外部門など英語を使用する部署や職種で、TOEIC700点を採用基準としている企業も多く、700点台を取得していると転職に有利に働く可能性があります。
TOEICを運営している国際ビジネスコミュニケーション協会が行った「英語活用実態調査2019」によると、海外部門の中途採用では要件・基準となる平均スコアは690点でした。
一般的な中途採用で要件・参考にしているスコア平均は560点となっているため、700点以上を取得していれば、転職で英語力をアピールできる可能性は高いです。
また国際ビジネスコミュニケーション協会が発表したデータによると、TOEICの2019年度の公開スコアの平均点は全体で588点、社会人は612点でした。
700点は平均よりも100点程度高いスコアなので、ハイスコアとは言えないものの、「一定レベル以上の英語力がある」という証明になります。
職種によっては500点台を要件・参考にしている企業もありますが、500点台は平均スコア以下なので、英語力をアピールする材料にはなりません。600点台でも平均レベルと見なされるため、英語力の高さをアピールしての転職活動にはスコアが足りていないと言えるでしょう。
もちろん転職を成功させるには英語以外にもさまざまな要素がありますから、700点を取得していれば圧倒的に有利とは言えません。
しかし、同じレベルのスキルや経験値がある2人が中途採用の選考を受ける場合、平均点以上である700点を取得している人の方が英語力で比較検討される場面において、アドバンテージを得る確率は間違いなく高くなるでしょう。
TOEIC700点に必要な正答率や難易度、英語レベルとは
TOEICのトータルスコアは下記のようになっています。
リスニング:5〜495点
リーディング:5〜495点
【トータル】
最低スコア:10点
最高スコア:990点
ただし、TOEICは特殊なスコア算出方法を使っており、どの問題が何点かは公表されていません。
ただ、公式問題集や模試がついているタイプの問題集には、正答率とスコアの換算表がついています。この換算表から考えると、TOEIC700点を取得するために必要な正答率は、70〜73%程度になります。600点の場合は60%程度、500点の場合は50%程度です。
国際ビジネスコミュニケーション協会が発表したデータによると、2019年度の公開テスト受験者数は830,954人でした。
そのうち695〜990点を取得した人は、29%に当たる240,677人です。ちなみに595〜990点を取得した人は48.5%なので受験者のおおよそ半数、495〜990点を取得した人は69%でした。
この数字を見ると、TOEIC700点は全受験者のうち、上位29%しか取得できていない難易度の高さがある一方で、600点は約半数の受験者が取得できているスコアのため、それほど難易度が高くないことがわかります。
「TOEICスコアとコミュニケーション能力レベルの相関表」によると、730点を取得している人は
「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」人
です。もちろん700点を取得している人でも個人差はありますが、ビジネスシーンでも大きな支障なく英語でコミュニケーションができる人材と見なされるでしょう。
転職におけるTOEIC700点のメリット3選
TOEIC700点があれば、転職が有利になる可能性が高いことはおわかりいただけたかと思いますが、取得を目指す上で実際どのようなメリットがあるのかを知っておきたいという人も多いでしょう。
転職においてTOEIC700点を取得しているメリットを紹介しますので、700点取得を目指している人は把握しておきましょう。
メリット1. 挑戦できる仕事の幅が広がる
TOEIC700点を中途採用の応募条件や採用基準としている企業は多いです。
TOEIC700点を取得すれば、500〜600点台では挑戦できなかった仕事にも応募できるようになります。転職先の選択肢が増え、今と同じ職種だったとしても、上のポジションを狙える可能性が出てきますので、キャリアアップも目指せるでしょう。
その中には、日常的に英語を使用したり、海外出張があったりする仕事もあります。英語を使ってビジネスで活躍したいと考えている人は、その夢を実現するチャンスです。
メリット2. 英語力をアピールできる
国際ビジネスコミュニケーション協会が発表したデータによると、TOEICで700点を取得した人は、全受験者の上位29%とそれほど多くありません。
先述した通り、転職で企業が要件・参考にしているTOEICの平均は620点、海外部門でも690点ですから、700点は英語力をアピールするには十分なスコアと言えます。
もちろん企業・業種・職種によっては700点ではアピールする武器として弱いこともありますが、目指すポジションによっては英語力がある人材として採用したいと思ってもらえる可能性が高いです。現在も英語学習を続けていることも伝えると、より強いアピールになります。
メリット3. 年収アップにつながる可能性がある
TOEIC700点を応募条件、採用基準にしている企業は、高待遇を用意している企業も少なくありません。
700点以上を取得すると、今までよりもいい待遇のポジションで採用される確率も上がるので、年収アップにも期待が持てます。
転職の場合、新卒採用と異なり、採用時に待遇の交渉を行うことになります。待遇は経験やスキルによって決まりますが、TOEIC700点が取得できる英語力があることが認められれば、交渉を優位に進められるかもしれません。
TOEIC700点スコアがあると転職時に有利な企業
TOEIC700点を取得すれば、転職時に有利になるメリットがあることがわかりました。
しかし、
「どのような企業への就職で転職時に有利になるのか具体的に知りたい」
という人も多いはずです。
そこでここからは代表的な日系企業や国内外資系企業が求めているスコアを基に、700点を取得していると転職が有利になる企業を解説していきます。
日系企業
TOEICスコア | 企業名 |
---|---|
860点 | 野村ホールディングス(必須) |
800点 | 大阪ガス、住友不動産、楽天(必須)、コナミデジタルエンタテイメント |
730点 | ソフトバンク、武田薬品工業、シチズン時計(必須) |
700点 | NTT東日本、三菱自動車(必須)、三菱電機、ブリヂストン、ファーストリテイリング、小松製作所(必須)、アクセンチュア、大和ハウス工業(必須) |
650点 | アサヒビール、オリックス、本田技術研究所(必須)、パナソニック(必須) |
TOEICスコアが必須な企業とそうでない企業はありますが、このように要件や参考にTOEICスコアを提示している日系企業は多いです。
この表を見るとわかるように、TOEIC700点以上を求めている企業は多く、700点を取得すれば挑戦できる仕事の幅はかなり広がります。
国内外資系
TOEICスコア | 企業名 |
---|---|
900点 | マッキンゼー、AIGグループ、リソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン |
860点 | サムスン電子(必須) |
850点 | ゴールドマンサックス |
800点 | 韓国LG、韓国ヒュンダイ、ユニリーバ・ジャパン |
750点 | アマゾンウェブサービス、グラクソ・スミスクライン、スイス・インターナショナル・エアラインズ |
730点 | フィン・エアー |
700点 | 日本ロレアル、ガルーダ・インドネシア航空 |
多くの国内外資系企業では700点台が最低要件・基準です。
日系企業と比較すると高いTOEICスコアが求められる傾向にあります。700点以上でも挑戦できる国内外資系企業のポジションはありますが、700点では不十分とみなされてしまうかもしれません。
国内外資系企業への転職を目指していて、希望する業種や職種が決まっているのであれば、どの程度のTOEICスコアが必要なのか調べておきましょう。
TOEIC700点台のスコアがあると有利な職種・仕事
TOEIC700点台のスコアがあると英語力を要する職種や仕事への挑戦も射程圏内になります。
転職が有利になる職種や仕事を5つ紹介します。
1. 国内メーカーなどの海外営業
海外の取引先や代理店とメールや電話でのやりとり、商談、クレーム対応などを行う海外営業は、700点台のスコアがあれば有利に働く職種の一つです。
新規案件獲得のために戦略を練るのも海外営業の仕事ですが、それらも英語で内容を考えます。基本的には日本国内で海外の取引先を担当しますが、場合によっては海外出張の必要もあるでしょう。
国内での業務は日本語を使っての業務も多いですが、海外の取引先や代理店とのやりとりは全て英語になります。そのためTOEIC700点以上があれば評価してもらいやすく、転職が有利になる可能性は高いです。
2. 英文事務
英文事務は英語での書類作成やメール作成、電話対応、翻訳・通訳業務などを行うのが仕事です。
事務にはさまざまな種類がありますが、その中でも英文事務は英語を使う頻度がかなり高め。文法や語法を理解していて、正確に英語を使いこなせる人材が求められる仕事です。
英文事務にどれくらいの英語力を求めているかは、企業や業種によっても変わってきますが、600点以上を求めているところが多いです。そのため、700点を取得していると、高い英語力があると評価され、転職が有利になる可能性が高いでしょう。
3. バイリンガルセクレタリー
社長や取締などの秘書として、2か国語を使いこなすのがバイリンガルセクレタリーです。
バイリンガルセクレタリーは、担当する上司が外国人の場合、会議や商談への参加が必要なこともあります。上司が日本人の場合は、海外取引先とのやり取りで通訳しなければならないこともあるでしょう。
それ以外にもスケジュール管理や来客対応、資料作成や出張手配など、さまざまな場面で英語を使う必要があります。高いレベルの英語力が求められる仕事なので、TOEIC700点以上を取得していると、選考で評価されやすいです。
4. 商社 各職
商社の多くは海外事業を展開しています。
そのため、営業や経営企画はもちろん事務や経理、人事などでも英語力が求められることは多いです。700点以上の英語力が必要なこともありますが、部署によっては700点を取得していることを評価してもらえる可能性はあります。
コミュニケーションが英語でできる高いレベルを求められる場合、日常会話レベルを求められる場合、読み書きができればOKな場合など、同じ企業でも部署によって求められる英語力が異なります。目指している部署や職種で、どれくらいの英語力が必要か調べておきましょう。
5. バイヤー
商品の買い付けを行うのがバイヤーです。
どのような商品を扱うのかは、企業によって異なりますが、市場を見極めて売れそうな商品を分析し、海外で買い付けを行う場合は価格や取り引き条件を交渉する必要があります。
バイヤーの中には英語力が必要のない場合もありますが、企業によっては英語力を求めているケースもあります。
世界を股にかけて活躍するバイヤーを目指すなら、TOEIC700点が取得できるレベルの英語力があることが望ましいです。
20代・30代など、年代別の転職でTOEIC700点は有利になるの?
20代や30代など、年代が異なれば転職でTOEIC700点が有利になるかどうかは変わってきます。
20代・30代・40〜50代に分けて紹介しますので、参考にしてみてください。
20代
20代での転職はスキルや経験よりも、やる気や将来性が重視されます。全受験者の上位29%に入る700点台を取得していることで、努力ができる人材としての評価につながる可能性が高いため、転職で有利に働くことが多いです。
TOEIC700点を取得して身につけた英語力をどう仕事で活かすのかをアピールするとともに、今後さらに上のレベルを目指すことを伝えられると、より高い評価が得やすくなります。
30代
20代で経験を積んでいることが想定される30代の転職では、選考の際にスキルや経験をアピールする人が多いです。多くの企業が英語力を求めている今、TOEICを転職時のアピール材料としている転職希望者は多数います。
TOEIC700点は飛び抜けて高い英語力とはいえませんが、それでも全受験者の上位29%に入るスコアなので、ポジションによっては有利になる可能性があります。
英語力以外にもアピールできる武器を用意しておくといいでしょう。
40〜50代
40〜50代の転職が成功するかどうかは、転職後にすぐ活躍できるかどうかが左右します。
英語を使う業務を行うポジションへの転職なら、TOEIC700点を取得している英語力があり、実践でも英語が使いこなせるのであれば評価される可能性があるでしょう。
ただ、英語を使用しないポジションで、今後も海外進出の予定のない企業であれば、そこまで重視されないかもしれません。また、ポジションによってはさらに上のスコアを求められることもあります。
未経験の職種・業界でも、転職時にTOEIC700点は有利になるか?
企業が未経験の人材でも積極的に募集していて、何よりも英語力を求めている場合、未経験でもTOEIC700点を取得していることが有利に働く可能性はあります。
ただ英語力があるだけでは評価されないこともありますから、それと併せて今までの経験を今後どのように活かせるか伝えられるようにしておきましょう。
応募したいポジションが即戦力になれる人材を求めている場合、TOEIC700点を取得していても、転職には有利に働かないことが多いです。
大学生・新卒就職時でもTOEIC700点は有利?
大学生が新卒で就職する際にTOEIC700点を取得していることは有利になる確率が高いです。
2019年度の公開スコアの学生の平均点は567点です。700点を取得しているということは、平均を100点以上上回る英語力がある証拠になります。
もちろん企業・業種・職種によるところもあるので一概には言えませんが、英語力をアピールしてみて損はありません。
英語を使用しないポジションでも、TOEIC700点を取得していることは、評価の対象になる可能性が高いです。企業側もTOEICで700点を取得する難易度は理解していますから、学生のうちにその努力ができた人材として、評価してもらえるでしょう。
TOEIC700点を転職時に活用するためのポイントや注意点
TOEIC700点を取得していることを最大限活用して、転職を成功させるためのポイントや注意点について解説します。
希望の転職が叶うように、ポイントと注意点を押さえておきましょう。
1. スコアに見合う英語力を身につける
一般的にTOEICというと、リスニング力とリーディング力を測るTOEIC L&Rテストのことを指しています。L&Rテストの対策だけにフォーカスしてしまって、
「スピーキング・ライティングの学習を全くしていない…」
ということにならないように意識しておきましょう。
企業はTOEIC700点を取得している人に、スコアに見合う英語力を求めていますから、スピーキング力とライティング力も合わせて強化しておくことをおすすめします。TOEIC対策に併せてアウトプット学習を意識して行い、ビジネスで活用できる英語力を身につけましょう。
2. 英語力以外のアピールポイントも用意しておく
転職を成功させるためにTOEICを受験している人は多いので、同じポジションに応募している他の人も、TOEICスコアを元にして英語力をアピールしてくる可能性は高いです。TOEIC700点は転職で有利になりやすいスコアですが、飛び抜けて高いスコアとは言えません。
他の転職希望者と差別化を図るためにも、英語力以外のアピールポイントを用意しておきましょう。具体的にはそのポジションに求められる専門知識や、それに関する資格の取得などです。
まとめ
本記事ではTOEIC700点が転職で有利に働くかどうかについて解説しました。
TOEIC700点を取得しているからといって必ず有利に働くとは言えませんが、英語力や700点を取得するまでに積み重ねた努力が評価されれば、大きなアドバンテージになるはずです。
転職を成功させてキャリアアップをしたいと考えている方は、TOEIC700点取得とともに武器になる専門知識やスキルを身につけ、ビジネスで使える英語力と専門性をアピールして転職成功を勝ち取りましょう。