TOEIC800点取得必須の大手IT企業にてTOEIC学習カウンセラー、研修運営企画を担当しているTOEIC満点講師のセレンです。
TOEIC800点の取得がマストの企業で長く指導していると、800点を取り切れる方と700点台で停滞してしまう方の差を日々目の当たりにします。
これまで800点取得のために累計2000人以上の方の個人カウンセリングを行い、年間100回以上の講義を開催してきた経験から、今回はTOEIC700点台で伸び悩む方の原因と効果的な対処法についてお話したいと思います。
700点台と800点台の間には大きな、そして明確な壁が存在します。その壁をしっかりと把握し、その壁の壊し方を理解するだけでスコアが大きく飛躍するきっかけになるはずです。
今800点を目指して頑張っている皆さまに、お役立ていただければ幸いです。
この記事を書いた人
セレン
留学経験、海外経験ゼロから31歳で英語学習を独学で開始しTOEIC LR満点、TOEICスピーキング満点、英検1級を取得。日本最大手IT企業にてTOEIC研修&英語学習カウンセリングを6年間担当。英語事業コンサルティング、高校生英語指導も行う。「英語のあたらしい読みかた」著者。
そもそもTOEIC800点のレベルは高い
TOEICの受験者数は2011年以降で見ると(新型コロナウィルスの影響の大きい2020年を除き)、年間で平均200万人強で、平均スコアはおおよそ600点台の半ばに落ち着きます。
TOEIC800点というスコアは公開テストやIPテスト(団体受験用テスト)を総合すると、全受験者の上位約10%に入るハイスコア帯という位置づけになります。
参考:TOEIC800点ってすごいの?レベル・難易度、必要な勉強時間を解説
実際に皆さんの周りにTOEIC800点以上を保有されている方がいればイメージしやすいかと思いますが、かなり英語が出来る人のイメージは強いのではないでしょうか。
TOEICで約8割の問題に正解できる力というのは、明確に英語ができるという証明になりうるものだと思います。そのくらい800点を取れる方というのは、英語を正しく詳細部分まで聞き取る力があり、英語を読む際も複雑な構造の文も正しく意味を理解する力を持っています。
Should you have any questions, please let me know immediately.
こういう英文に出会ったとき、700点台の方の多くは
「前半部分の should がどういう役割かよくわからないけど、概ね「質問があれば」、のような内容かな」
という理解で済ませてしまうケースが多いです。
それに対し、800点以上取れる方は、
とクリアな理解をしていることがほとんどでしょう。
少しずつ英語がわかり始めた500点台、英語に少しづつ慣れてきた600点台、そしてなんとなく英語が大体わかるようになってきた700点台。この先待ち構える800点台とは「正しく英語がわかる」フェイズなのです。
なぜ800点の壁を超えることができないのか?よくある原因を解説
なんとなく英語がわかる700点台と正しく英語がわかる800点台、こうして文字で並べてみると少しづつ課題が見えてくるのではないでしょうか?
800点を超えられない原因は一言で言ってしまうと、「なんとなくわかった状態のまま」だからなのです。
リスニングしていると文全体が常に理解できているのではなく、発言内容から聞こえた単語をつなぎ合わせて推測している場面が多い。
リーディングでは細かい内容の文書になると意味が取れない局面が増え、読み進めるたびにどんどん理解が曖昧になっていく。
こんな状態がまさに700点台の方に多く見られる現象で、今ご自身が700点台の方は思い当たる節があるのではないでしょうか?
それではここで、800点の取得を妨げる壁を具体的に見てみましょう。壁は全てで4つあります。どれも800点の取得のためには必ず乗り越えるべきものです。
TOEIC800の壁1 曖昧な語彙習得
700点台からスコアが伸びないという方に改めて振り返っていただきたいことは、「語彙習得のレベル」です。
一言で対象となる単語を覚えた、知っている、といっても様々な定着レベルがあります。正しいニュアンスを理解し書いたり話したりする際に使用することができる高次元での習得もあれば、だいたいのニュアンスならわかるという浅い習得レベルも存在します。
800点を取得するためには、ある程度高い次元での習得が求められます。
例えばTOEIC700点レベルの語彙として、remakable という単語があります。 この単語を見た際、品詞は形容詞でなんとなく「すごい」、のような意味、という習得レベルであれば要注意です。800点取得のために求められる取得レベルはもう一段、高いものなのです。
具体的にどういったレベルかは、対処方法の項目で詳しくお伝えいたします。
TOEIC800の壁2 曖昧なリスニング理解
リスニングの理解度にも壁が存在します。
700点台の方のトータルスコアに対する内訳として、リスニングスコアは300点後半の方が多いのではないでしょうか。800点を取得するということは400点は確実に超えていく必要があります。
音だけ分かる、意味は分かるけど聞き取れない、では聞いて分かることはないのです。そしてこのスコア帯の多くの方に言えることは音理解はほぼクリアできているが、意味理解が追いつかない文がまだ多いということなのです。
「Part2では一回聞いてクリアに理解できない問題がまだ多い」
「Part3、4になると試験本番で集中して聞こうとしても途中で迷子になってしまい、なし崩し的に誤答をしてしまう」
みなさんも、このような現象を体験済みではないでしょうか。
TOEIC800の壁3 曖昧な訳
リーディングの長文パートなどで顕著なのですが、700点台の方に一文ずつ正確に訳してみてください、とお願いすると、
- 訳全体がフワッとしていたり
- 正しくない意訳が含まれていたり
- そこに確実に存在する英単語を無視した訳になっていたり
ということがよく起こります。
これは800点以上取得されている方にはあまり起こらない現象です(もちろん文章のレベルによりますが)。700点台の方が、まだまだボヤっとした解像度で英文の世界を眺めている顕著な例だと思います。
今読んでもらった文書は大体どういう内容でしたか?と聞くと概ね答えることができるので、TOEICのPart7で最初の設問で出てくる What is the purpose of the e-mail? のような全体理解を問う問題にはだいたい答えられるのですが、それ以降に続く具体的な情報を問う問題にはまだまだ間違えてしまう、という段階です。
TOEICは正確な訳を書く試験ではありません。ただ、それと正確に訳が取れなくてもいい、というのは同義ではありません。700点台の方が多く取りこぼしている問題は、正確な訳が取れていないことによる理解不足から来るものが多く存在しているはずです。
TOEIC800の壁4 インプット量の不足
最後の壁は、これまでの3つの壁が超えられないことによって発生する壁です。
語彙が曖昧、かつ聞く英語が曖昧なため、正確な訳が取れていない英文が多くなり、それによって英語を読む機会、聞く機会が少ないという壁です。
まだまだ聞いてもはっきりと分からない、読んでも面白いと思えるほどの理解度がない状態なので、積極的に英文を読もう、聞こうという姿勢になれないこと自体はまったく問題はないと思います。なんだかよくルールがわからないゲームをやっていても楽しくないのと同じです。
つまり最後の壁は、1~3の壁をクリアしていくことで徐々に解放されていく壁なのです。
分からないから聞かない・読まない、聞かない・読まないから分からない、というサイクルを打破して、分かるから聞く・読む、聞く・読むからもっと分かる、というサイクルが生み出せれば成長のスパイラルは一気に躍動し始めることでしょう。
TOEIC700点から800点の壁を超える対処方法
次は先ほど挙げた、4つの壁を確実に超えていくための具体的な対処法を見ていきたいと思います。
TOEIC800の壁1 曖昧な語彙習得への対処方法
800点取得のためには品詞や日本語訳だけではなく、コロケーションといってどんな単語と組み合わせて使われるのか、という理解も重要です。
日本語で「変哲」と聞くと咄嗟に「なんの変哲もない」というフレーズが浮かぶ方が殆どではないでしょうか?
英語も同じく、この単語はこういう単語と一緒に使われるという組み合わせがある程度決まっています。それを無視して自分で考えた組み合わせをネイティブは「不自然な英語」だと感じるはずです。
多くの方が持たれているであろう「金のフレーズ」という単語帳は、なぜ「金の単語」ではなくフレーズなのかというと、そのコロケーションをセットで覚えやすい設計になっているからなのです。
曖昧な語彙習得レベルを一段上げる具体的な手順は下記です。
800点が確実に取得できるレベルの方は意識的でも、無意識的でもこれらがしっかりとできているのではないでしょうか。確実に壁を超える、ということであればこれらを意識的に行う必要があります。
まずは単語帳に載っている正しい訳を言えるように…!
STEP1に関して多いパターンが、
administrative → 「うーん、なんか上からやらせる、みたいな…?」
eligible → 「ううーん、認められてる、みたいな…?」
のように訳そのものを正しく覚えていないパターンです。
その理解自体が大きく外れているわけではないので、本人としては覚えている単語として認識していることが多いのですが、こういった曖昧な理解の語彙が英文を処理する際に大きく理解を邪魔してしまうのです。レンズの曇りのように視界をぼやけさせ、視界をあいまいなものにします。
まずは単語帳に載っている正しい訳が言えるようにする、ということを大事にしてみてください。それができれば合わせて発音や品詞(名詞か動詞かなど)も正しく覚えるようにしましょう。上記ができるようになると、単語とだいぶ仲良くなれるはずです。
もう一歩踏み込んで、その単語がどういう単語と仲が良いのか、まで興味を持つようにしてみてください。試験では必ず他の単語と組み合わされて出てくるので、絶対に無駄なプロセスにはなりません。
金のフレーズに掲載されているフレーズ単位で覚えるのもよいですし、Merriam Webster のような例文が豊富なオンライン辞書を活用するのも良いでしょう。確実に運用レベルが高まるので、書く力、話す力にも直結してきます。
TOEIC800の壁2 曖昧なリスニング理解の対処方法
まだまだ聞いていても正しく聞き取れる英文が少ない、という方が意識することは「フルセンテンスで聞ける英文を増やす」ということです。対
象を単語や箇所のように部分的にフォーカスしていた意識を、正しく全体を理解する・1文単位で丸ごと理解する、という意識に移行させましょう。
効果的なトレーニングはPart2を使ったディクテーションです。やり方の手順としては、下記の手順が効果的です。
※音として聞き取れるけど知らない単語などは、カタカナでメモするのもOK
100%の意識を傾けて聞き取る姿勢が身に付き、かつやればやるほど聞き取れる箇所が増えていくので、明確な効果をもたらしてくれるはずです。
リスニングは最終的には「知識」です。
知っているから聞き取れる、聞いたことがあるから分かる、という文がどんどん増えてくることによって使用する脳のCPUが軽減され、疲れずに聞くスキルが育ってくるのです。
私も個人的に100回ほどディクテーションをこなしたあたりから、はっきりと成長を感じたことを今でも覚えています。
TOEIC800の壁3 曖昧な訳の対処方法
この壁を超えるためにすべきことは明確です。まずは意識としては正確な訳から逃げない、という意識を強く持つようにしてみてください。
正しい訳から逃げてしまう方の特徴としては文全体をざっくりと訳そうとする、という点が挙げられます。これを防ぎ、逃げれないようにするためにはスラッシュリーディングが非常に効果的です。
The warehouse manager hired / a mechanic / to examine the damaged machinery.
スラッシュリーディングとはこのように、意味の句切れ目に線(スラッシュ)を入れて一文を小分けにして理解を高めるトレーニング方法です。
細かく分けた箇所(チャンク)単位で正しい訳を取る癖を付けると、フワッとしていた英文理解が徐々に輪郭が見えるようになり、はっきりとわかるようになります。広がっていた懐中電灯の光が中心に向かって徐々にフォーカスし、強くはっきりとした光になっていくイメージがわかりやすいかもしれません。
最初のうちは読みにくいなと感じた文書全体を対象にスラッシュリーディングを行うことが理想的ですが、慣れてくると自分の理解が曖昧な文がはっきりとわかるようになってきます。
そうなれば、そのわかりにくいと感じる英文だけを対象に行えば問題ありません。
TOEIC800の壁4 インプット量の不足の対処方法
上記3つの壁が存在する結果として、インプット量が不足している状況は多くの700点台の方に共通する課題であるはずです。800点を確実に取れる方はリスニングで疲れずに最後まで聞く力や、リーディングで最後まで集中して理解度を保ちながら読み続ける力が問われます。
これらの力を育ててくれるのはやはりインプットの量なのです。
インプット量を増やす際に大事なことがいくつかあります。まずは何をインプットするのか、というテーマです。大事なことは下記の2つです。
- 確実に理解できるものをインプットする
- 7割程理解できるものをインプットする
1. 確実に理解できるものをインプットする
1に関して最も確実なものは、TOEICのリスニング、リーディングなどの解き終わった問題で、しっかりと復習をしたものをインプットする方法です。
一度復習したんだから理解できて当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、それで良いんです。一度復習した素材というのはランニングコースで言うと下見が終わった状態です。
同じコースを何度も走る練習も、インプットの量を確保することになります。
復習の終わったリスニング素材を繰り返し聞いてみる、しっかり復習したリーディングの問題を繰り返し読んでみる、という練習をしてみるとよいでしょう。
2. 7割程理解できるものをインプットする
こちら関しては様々な素材があると思いますが、ポッドキャストや英語の記事などが素材としてはよいでしょう。一つオススメのもののリンクを貼っておきます。
リアルな英文ニュースを好きな語彙の難易度で読めるサイトです。適切な語彙レベルに調整するとリーディングのインプット量の確保に非常に役立つはずですのでぜひ試してみて下さい。
7割程度は理解できる内容というのは読み終わったあとに、概ねどんなニュースに関する記事かを要約できるはずです。そのくらいの理解度になるように語彙レベルを調整し、ぜひ日々のタスクとして取り入れてみてください。
インプット量の目安の理想は「TOEIC当日が英語をもっとも聞いている/読んでいる日にならない」ようにすることです。
つまり試験でインプットする量より、多くの英語を日々処理できているかが800点を突破するには大切な考え方ですので、ぜひ覚えておいてくださいね。
どうしてもTOEIC800の壁を超えられそうに感じない時は…
なかなか頑張っているのに壁を突破出来ない時に、意識してほしいことが3つあります。
- 1. 学習に余計な負荷がかかっていないか
- 2. 成長を測る仕組みがあるか
- 3. 孤独な学習になっていないか
1. 学習に余計な負荷がかかっていないか
学習にとっても余計な負荷とは、例えば1日の学習内容を質ではなく量で決めてしまっている時などに発生します。
絶対に10ページやらないといけない、というような決め方をしてしまうと、1〜2ページ目にどれだけ時間がかかっても、残り8ページもその日のうちに終えないといけないタスクになってしまい、大変継続が難しく、かつストレスフルなものになってしまうでしょう。
真面目な人こそやってしまいがちなのですが、単純に量で区切るのではなく「理解度」や学習の「質」にフォーカスし、ある程度幅を持たせた学習計画にするとよいでしょう。
例えばPart7を毎日必ず5問解く、というように数の目標は立てながらも、理解が追いつかず復習に時間が必要そうな問題に出会った場合は、5問解くという目標は一旦置きましょう。その一つを今日中に深く理解する、という目標に切り替える自由度を計画に持たせるようにするとよいでしょう。
2. 成長を測る仕組みがあるか
2番目も大切で、これはシンプルに1ヶ月に一回は公式問題集を本番通りに解いてみる、過去に解いた問題を再度解いてみてどのくらい成長しているかを測る、などを行うことでクリアできます。
やはり1番大きいモチベーションは成長実感で、自分自身の肌感覚で伸びているな、と感じられることが一番大切です。
そのためには学習の過程で成長を測る仕組みが組み込まれているかどうか、が最も大切になってきます。効果測定を適切に行うことではっきりと伸びていることを把握する、ということが次への意欲につながるのです。
3. 孤独な学習になっていないか
また学習は孤独になればなるほど、しんどくつらくなるものです。一人で数カ月勉強して、一人で試験を受けに行って、その結果を一人で確認する、というサイクルはなかなか寂しいですよね。
スコアが伸びたときなどは良いかもしれませんが、スコアが下がっていたりすると心が折れてしまいそうになってしまうはずです。
そのためにも大切なことは、日頃から学習を共有できる仲間を持っておくことです。
SNSで仲間を見つけたり、TOEIC学習のコミュニティーに参加するなど、喜びやしんどさを共有できる一緒に頑張れる仲間がそばにいる状態で学習を進められるように工夫してみてください。
壁を正しく理解し、正しい努力をすれば結果は必ずついてくる
いかがだったでしょうか?今回は800点という大きな壁を突破するための対策法についてお話させていただきました。
800点台の壁というのは間違いなく存在します。それはつまり700点台の方と800点の方の英語力には、ある一定の差があるということなのだと思います。その差に立ちはだかる壁を正しく理解し、正しい努力をすることで結果は必ずついてくるはずです。
TOEICのスコアが上がれば上がるほど、目標スコアが高くなればなるほど、課題の在りかは見つけにくく、その課題を乗り越えるための労力も比例して増えていきます。
大切なことはそこで無計画にとにかく問題集を解きまくる、だったり、とにかく学習量を増やす、という方向に流れてしまわないことです。常に戦略を持って学習を継続すること、そしてその先には必ず明るい未来が待っている、ということも忘れないようにしましょう。
一歩一歩描いていた未来に近づいている、と思えれば英語の勉強もワクワクしてきませんか?そのワクワクを大事に、今日も頑張っていきましょう!
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