こんにちは、TOEIC満点講師の上田哲也です。TOEICのリスニングスコアが伸び悩み、
「ディクテーションに挑戦してみたけれど、いまいちやり方が分からない」
「本当に効果があるのか分からない」
という方は多いかと思います。ディクテーションは効果的な勉強法である一方で、負荷が高く時間もかかるので、ちょっとしたコツが必要です。
ということで今回は、そんなディクテーションについて、そのメリットや取り組み方、教材の選び方から取り組む際の注意点まで、徹底的に解説していきます。この記事を読んでいただければ、ディクテーションに取り組むために必要な知識は一通り手に入るはずです。
これからディクテーションを日々の学習に取り入れて、TOEICのスコアを上げていきたいという方、是非最後までこの記事をお読みください。
この記事を書いた人
上田 哲也
バンクーバー留学、鉄鋼商社勤務を経て、現在は英語講師として企業研修などを担当。著書に『時短省力 私の英語勉強法』がある。TOEIC990点 / 英検1級 / IELTS8.0 / 国連英検特A級
この記事を監修した人
セレン
留学経験、海外経験ゼロから31歳で英語学習を独学で開始しTOEIC LR満点、TOEICスピーキング満点、英検1級を取得。日本最大手IT企業にてTOEIC研修&英語学習カウンセリングを6年間担当。英語事業コンサルティング、高校生英語指導も行う。「英語のあたらしい読みかた」著者。
英語学習でのディクテーションとは?
ディクテーションとは、聞こえてきた英語を一言一句すべて書き出していく勉強方法です。
もちろん、一回聞いただけですべての英文を書き出すことは、よほどの英語上級者でない限り困難です。一般的には何度も繰り返し音声を再生して、聞き取れたところから少しずつスクリプトを完成させていくことになります。
この際、スペルは正確でなくても大丈夫ですので、聞こえた音を書き出していくことを優先していきましょう。
ディクテーションに必要な英語レベル。英語初心者には難しい?
ディクテーションは、教材のレベルさえ適切であれば、基本的にどんなレベルの英語学習者でも取り組めます。
とはいえ、
- 英語の音を聞き取るための最低限の発音
- 聞き取った英語を正確に理解するための基本的な単語や文法
を知っておくに越したことはありません。
ですので、おおよその目安として、中学レベルの英語力があることが望ましいと言えます。
シャドーイングとの違い
シャドーイングとは、聞こえてきた音声を影(シャドー)のように追いかけて発話する学習法です。
ディクテーションとシャドーイングは、両方ともリスニング力を鍛える勉強法です。しかし、
- ディクテーションは聞こえた英語を「書き出す」
- シャドーイングでは聞こえた英語を少し遅れて「発話する」
トレーニングであるという点において異なります。
ディクテーションの特徴は、聞き取れた音とそうでない音が、視覚的に文字として明確になることです。
一方でシャドーイングは、聞こえてきた音声に高速でついていく必要があるため、発話スピードも同時に鍛えることができるメリットがあります。
ディクテーションのメリット リスニング対策・TOEIC対策で役立つ?
ここからは、ディクテーションに取り組むメリットを3つお話ししていきます。
メリット1. 英語が聞き取れるようになる
まずディクテーションをすることで、英語を正確に聞き取る力が鍛えられます。
例えばTOEICのリスニング問題を普通に解くだけであれば、一言一句正確に聞き取れていなくても、全体の雰囲気や文脈から、問題に正解することはできます。
ですがディクテーションでは、音声をすべてを書き出していく必要があるため、聞き取れなかった音が明らかになります。
そして、その次のステップとして、それらの音が聞き取れるように訓練することで、英語の音声を正確にキャッチする力をぐっと鍛えることができるのです。
メリット2. 発音の知識がつく
次に、ディクテーションで、英語の発音の知識をつけることができます。
聞こえてきた英語を書き取れない理由の一つは、自分がイメージしている音と、実際の英語の音が異なってることです。
例えば、TOEICでも出題される cupboard(戸棚)は「カップボード」ではなく/kʌ́bərd/と発音されます(”p”の音が発音されません)。これを知らないと仮にcupboardという単語を知っていても、音声を聞いただけでは理解することができませんよね。
そのため、聞き取れなかった箇所と、その理由(そもそも発音を誤って認識していたなど)を明らかにし、そのギャップを埋めていくことが重要になります。
ディクテーションに取り組むと、このようなプロセスで、発音の知識を強化していくことができるのです。
メリット3. 文法力がつく
最後に、文法力についてです。
ディクテーションはただ聞こえてきた音声を書き出すだけでなく、前後の単語から「文法的に」聞き取れなかった箇所を推測する力も必要になります。
具体的には、
“She suggested that he app— for the job”
のように文や単語の一部が完全に聞き取れなかったとしても、”app—” の部分は「apply for the job」というコロケーションから apply という単語で、この文は「仮定法現在」だからthat節の中のapplyは原形だと推測するようなイメージです。
このように、ディクテーションをすることで、仮に聞こえない箇所があったとしても、それらを補完する文法力を鍛えることができるのです。
ディクテーションのやり方・練習方法は?コツについても解説
ここからは、ディクテーションのやり方を、3ステップに分けて紹介していきます。
ステップ1. まずは音声を聞く
まずはディクテーション用の音源を用意します。
詳しくは後述しますが、できるだけ短めのものがおすすめです。TOEIC初心者であればPart1やPart2くらいのもの、中上級者でも1〜2分くらいのものがおすすめです。
最初は全体を通して音声を聞いておきましょう。1回で内容が掴めれば1回だけでも十分ですし、もし必要であれば2〜3回聞いてください。
ステップ2. 一文ずつ書き出していく
次に、一文ずつ音声を再生し、英文を書き出していきます。
一度ですべての英文を書き出せなくても大丈夫です。聞き取れた単語から優先的に書き出していきましょう。
最初に聞き取れた範囲でざっくりと書き出して、何度もリスニングをする過程で、徐々にブランクを埋めていくようなイメージです。
ポイントは、あまり細かく音声を止めず、意味のかたまりごとに書き出していくことです。
こうすることで、リスニングで素早く英語を理解するために必要な、英語をかたまり(チャンク)ごとに処理する力を鍛えることができます。
もし3〜5回ほど聞き直して聞き取れない部分があれば、「今は聞き取れない英語」と見切りをつけてステップ3に進んでいきましょう。
ステップ3. 聞き取れなかった箇所を復習する
ディクテーションをして聞き取れない箇所が明らかになったら、なぜそれらが聞き取れなかったのかを明らかにし、聞き取れるようにしていきます。
ほとんどの場合、ディクテーションができない原因は、
- 単語やフレーズを知らなかった
- 文法を知らなかった
- 思っていた発音と違った
のいずれかになります。
単語やフレーズを知らなかった場合は、和訳を確認したり、辞書を引いたりして、それらを記憶していきましょう。
聞き取れない英語のほとんどは「知らなかった表現」であることが多いので、このように表現力をつけることは、ダイレクトにリスニング力の向上に繋がります。
また、使われていた文法を知らなかった場合は、手元の文法書で確認したり、インターネットで検索したりして、例文をチェックするようにします。
できることなら、その文法を使った例文を5〜10個くらいノートに書き留めて、何度も音読してその構文をインプットできたら理想的です。
そして、想像していた発音が実際の音と違った場合は、辞書で発音記号を確認し、何度かその単語を声に出して、発音を覚えてしまいましょう。
ディクテーションの教材・題材の選び方や基準
ここからは、ディクテーションに取り組む際、どのような素材を選ぶと良いかについて解説していきます。
基本的にはTOEICの素材に取り組むことがベストではありますが、中上級者の方であれば下記の基準を参考に、TOEICにとどまらずさまざまな教材にトライしてみてください。
教材選びのコツ1. ある程度理解できるものを選ぶ
まず、ディクテーションで使用する教材は、難しすぎないものを選びましょう。具体的には、1度聞いて概要がざっくり掴めるもの、ディクテーションをして8割くらいは書き出せるものが良いかと思います。
ディクテーションでは、聞き取った音声を書き取るだけでなく、聞き取れなかった箇所を前後関係から推測することも必要になります。
教材選びのコツ2. スクリプトがある教材を選ぶ
ディクテーションをする際は、答え合わせをするために、必ずスクリプトがある素材を使うようにしましょう。
日本語訳はあってもなくても大丈夫ですが、安定して英文が正確に読めるようになるTOEIC800オーバーのレベルになるまでは、日本語訳があると安心かと思います。
教材選びのコツ3. 英文が長すぎないものを選ぶ
ディクテーションに使う素材は、あまり長すぎないものがおすすめです。
ディクテーションは非常に負荷の高いトレーニングで、時間もかかります。そのため、現在の英語力や素材の難易度にもよりますが、長くても1〜2分程度の長さの素材を使うと良いでしょう。
教材選びのコツ4. 速度が調整できるものを選ぶ
ディクテーションの教材は、速度調整ができるものが理想的です。
最初は通常スピードでディクテーションに挑戦し、復習の際にスロー再生をして、どのように英語が発話されているのかを確認してみてください。
速度調整ができる教材については、具体的には次のセクションでお伝えします。
ディクテーションでおすすめの教材・題材は?
ここからは、ディクテーションにおすすめの素材を4つお伝えしていきます。
おすすめ1. TOEIC公式問題集
まず一番おすすめしたいのが、TOEIC公式問題集です。
こちらはTOEICを作成するETSによる公式の問題集で、TOEIC学習者にとって必須のテキストです。
ディクテーションをする箇所としては、TOEIC600点くらいまでであれば、Part1やPart2などの短文セクションがおすすめです。
TOEIC800オーバーを目指す上級者であれば、Part3やPart4などの長文セクションに取り組んでみてください。
ちなみに、abceedというアプリを使用することで、速度を0.5〜2.0倍で調整できます。音声だけであれば無料で聞くことができますので、TOEIC学習には必須のアプリです。
おすすめ2. News in Levels
News in Levelsは無料の英語のニュースサイトで、3つのレベルで同じ内容の記事が読めるのが特徴です。
それぞれのレベルの英文に音声とスクリプトがついていて、内容もとてもコンパクトですので、ディクテーションにとても向いています。
TOEIC600点を目指す人であれば、まずはレベル1やレベル2を目安に取り組んでみてください。レベル3になると、ネイティブ向けのニュースと遜色ない難易度になります。TOEIC800オーバーを狙う上級者であれば、ぜひレベル3にチャレンジしてみてもいいでしょう。
おすすめ3. The English We Speak
TOEIC600以上の方であれば、BBCの The English We Speak もおすすめです。
BBCは他にも多くの学習素材を無料で提供していますが、特にこちらのThe English We Speakが長さが2分ほどと短く、ディクテーションに向いています。
TOEICのリスニングで、イギリス英語に苦手意識がある方は特に、こちらのBBCの音声を使ってイギリス英語に慣れておきましょう。
またYouTubeでこちらのコンテンツを視聴すると、字幕表示もできて、速度調整が可能になるのでおすすめです。
https://www.bbc.co.uk/learningenglish/english/features/the-english-we-speak
おすすめ4. TEDICT
TEDICTはTEDのプレゼンをディクテーションするためのアプリです。
TOEICより難しい素材で高地トレーニングをしたいという、TOEIC800点以上の上級者におすすめの内容となっています。
いきなりTEDは難しいな……と思われる方も、このアプリを使えば速度調整も可能ですので、一度トライしてみる価値はあるのではないでしょうか。
基本的には有料のアプリとなりますが、まずは無料で試したいという方はTEDICT LITEをダウンロードしてみてください。こちらのバージョンだと、コンテンツに若干の制限はあるものの、TEDICTがどのようなアプリかを知るには十分な機能が使えます。
ディクテーション練習時の注意点
最後に、ディクテーションに取り組む際の注意点について、3つお話しさせてください。
注意点1. ずっと聞き続けない
ディクテーションは、5回くらい聞いて分からなかったら、答え合わせに移りましょう。
ディクテーションをしているとどうしても、聞き取れるまで何度でも聞き直したくなってしまうものですが、時間のかけすぎは禁物です。
私の経験上、5回ほど聞いても聞き取れないものは、それ以上やっても聞き取れることはあまりありません。
ディクテーションの目的は、聞き取れなかった箇所を明らかにして、そこを改善することにあります。
ですので、何回か聞いて分からない場合は、ずっと足踏みせずに潔く答え合わせのフェーズに移行していきましょう。
注意点2. スペルにこだわり過ぎない
ディクテーションにおいて、スペルはそこまで重要ではありません。
ディクテーションはリスニングの訓練ですので、ここでは聞こえてきたことをそのまま書き出すことを優先し、スペルはある程度適当でも大丈夫です。スペルを想像することが難しい場合は、部分的にカタカナを使っても良いでしょう。
もちろんスペルを覚えることも重要ですが、ディクテーションに取り組むときはリスニング力の向上に集中していきましょう。
注意点3. なぜ聞き取れなかったかを明らかにする
ここが一番大事なところなのですが、聞き取れなかった箇所は「なぜ聞き取れなかったのか」を明らかにするようにします。そして、次からその音を聞き取れるように知識をつけてください。
ディクテーションというのは、
- 聞こえてきた音を書き出すことが半分
- 聞こえなかった音を聞こえるようにすることが半分
です。ですので、英文を書き出した後は必ず復習をして、なぜ聞き取れていなかったのかを分析し、次に同じ英語を聞いたときには確実に聞き取れるようにしておきましょう。
まとめ
ということで今回は、TOEIC学習における効果的なディクテーションの取り組み方についてお話ししてきました。
ディクテーションはとても負荷の高い学習法である一方、単語、文法、発音の知識をつけながら、リスニング力を上げるためにとても効果的なトレーニングでもあります。
教材としては、難しすぎず、長すぎず、スクリプトがあって、できれば速度調整ができるものを選んでみてください。
そして、ディクテーションは、英語を書き出すことと、聞き取れなかった音を聞こえるようにすることがセットの学習です。
ぜひこれらのことを意識して、リスニング力をアップさせ、目標のTOEICのスコアも達成してください!
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