大手企業だけでなく、中小企業も海外に進出したり海外企業との取引をおこなったりするのが一般的となった現代において、転職を成功させるためには英語力が欠かせません。
そして転職活動をする際、その英語力を形として証明できるのが英語資格です。
ただ、
「転職で英語の資格なんて本当に意味があるの？」
「実際に英語が話せれば資格がなくても問題ないのでは？」
と思っている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、TOEIC930点・英検1級を取得し、国内企業の海外営業や外資系企業への転職経験がある私が、
- 転職時に英語資格が必要な理由
- 英語資格を取得するメリット
- 転職を目指す上でおすすめの英語資格
について解説します。
現時点で海外と取引をしていない会社にも、英語力を求めている場合はあります。転職に有利に働く英語資格を取得し、理想の転職を実現させましょう！
転職でのキャリアアップを考えている人は、ぜひ読んでみてください。
この記事を書いた人
阿武 夏織
TOEIC930点、英検1級取得。外資系企業、日系企業での海外営業勤務を経たのち渡米し、アトランタでNBAダンサーとして活動。ライターとしてさまざまな英語学習サイトで学習方法に関する記事をはじめ、海外文化・海外旅行についての記事などを執筆中。
この記事を監修した人
セレン
留学経験、海外経験ゼロから31歳で英語学習を独学で開始しTOEIC LR満点、TOEICスピーキング満点、英検1級を取得。日本最大手IT企業にてTOEIC研修＆英語学習カウンセリングを6年間担当。英語事業コンサルティング、高校生英語指導も行う。「英語のあたらしい読みかた」著者。
英語資格は転職に意味ない？有利になる？
グローバル化が急速に進んでいる今、英語力があることはキャリアアップを目指した転職において必須の条件となりつつあります。
ただ、採用されれば英語資格の有無よりも、英語を使いこなせることが求められるので、英語資格は意味がないように感じる人もいるかもしれません。
しかし、英語力は目に見えないので、英語資格がなければ履歴書で英語力をアピールできません。
企業が求人を出すと、たくさんの応募があり、まずは書類選考でふるいにかけられます。いくら英語がネイティブ並みに話せても、書類で企業にアピールできなければ、面接まで辿り着けない可能性もあるのです。
転職サービス・DODA(デューダ)が2014年に公開した調査結果では、TOEICを受験した人の転職成功率は、30代では受験していない人の成功率よりも1.41倍あることが判明しました。
一概に英語資格を取得しているから転職が成功するわけではありませんが、英語資格を取得していれば誰もがわかる形で英語力をアピールできるため、転職で有利に働く可能性は十分あるでしょう。
英語資格を取得するメリットは？
転職活動において、英語資格を取得するメリットを紹介します。
英語資格取得を目指す前に、まずどんなメリットがあるのか把握しておきましょう。
メリット1. 書類選考で担当者の目に留まりやすい
人気の高い企業・ポジションの場合、求人を出すと多数の応募があります。まずは書類選考でふるいにかけられますが、一定レベル以上の英語資格を取得していれば採用担当者の目に留まりやすいです。
転職を成功させるためには、まず履歴書や職務経歴書でアピールして、会ってみたい人材と思ってもらう必要があります。
他の人を上回る英語資格をアピールできれば、「会ってみたい」と思ってもらいやすいため、書類選考を通過する可能性がアップするでしょう。
メリット2. 自己アピールの材料になる
英語資格で一定のレベル以上を取得するためには、継続して英語を学習しなければなりません。英語資格を取得しているということは、「継続的な努力ができた人」ということの証明でもあります。
採用担当者もそのことは理解しているので、ただ単に英語力をアピールできるだけでなく、仕事をしていく上で欠かせない継続力をアピールすることにも繋がるのです。
メリット3. 挑戦できるポジションが増える
国内大手企業や外資系企業、海外企業とビジネスをしている中小企業などは、求人で一定レベルの英語力を求めているケースがほとんどです。
特定の英語資格取得が必須のケースもありますし、資格の指定がなくても「TOEIC800点台と同様の英語力が必須」などと記載されていることもあります。
条件を満たす英語資格を取得していれば、これまでは挑戦できなかったポジションにも応募できるようになります。より待遇のいいポジションに挑戦できるようになるため、年収アップが狙えるでしょう。
また、採用後にも仕事の幅は広がります。海外出張や海外駐在の候補者になれる可能性がありますし、新規プロジェクトなどチャレンジングな部署のメンバーに選ばれるかもしれません。
資格を選ぶ際のポイントや注意点
前章で紹介した通り、英語資格を取得していれば、転職を有利に進められるだけでなく、転職後にもチャンスが広がり、キャリアアップが目指せます。
ただ、英語資格を取得するときは、どのような英語資格でもいいというわけではありません。資格を選ぶ際のポイントや注意点を紹介しますので、押さえておきましょう。
知名度のある英語資格を取得する
英語資格は数え切れないほどあります。
いくら難易度が高い英語資格を取得したとしても、その資格自体が一般的に知られていなければ、せっかく努力しても正当な評価が受けられません。
基本的には知名度が高い英語資格を選びましょう。おすすめの英語資格は後ほど紹介します。
応募したい企業が指定している英語資格がないか調べる
企業が応募の必須条件として、英語資格を指定しているケースがあります。いくら他の英語資格で同等のレベルを取得していたとしても、指定されている資格が必須の場合、応募しても弾かれてしまうかもしれません。
転職を希望する特定の企業があるなら、指定の英語資格がないか調べておきましょう。
求められる英語力を満たす資格を取得する
基本的には知名度の高い英語資格を取得するのがおすすめですが、専門用語が多々あるような業種や職種の場合、一般的な英語資格だけではそれほど評価されない可能性があります。
専門分野への知識を求められるような業種・職種への転職なら、その分野に関する英語の造詣が深い事を証明できる資格がないか調べてみてください。専門的な英語資格の例としては、技術英検や日本英語医学検定などがあります。
転職でおすすめの英語資格・試験5選
ここからは、今後転職でのキャリアアップを目指す人におすすめしたい英語資格・試験を紹介します。
それぞれどのような英語資格なのか、難易度はどれくらいなのかなども紹介しますので、自分に合った英語資格はどれか考えながら読み進めてみてください。
1. TOEIC
一般財団法人・国際ビジネスコミュニケーション協会が実施している英語テストで、英語を母国語にしない人を対象にして、世界中160カ国で実施されています。
リスニング・リーディングスキルを測る「L&R TEST」と、スピーキング・ライティングスキルを測る「S&W TEST」があり、一般的にTOEICというと「L&R TEST」のことです。
年間200万人が受験しているTOEIC L&R TESTは、日本国内で最も知名度があるテストと言っても過言ではありません。テストは合格・不合格ではなく、10点〜990点満点のスコアで評価されます。
転職に必要なスコア目安
英語力をアピールしたいのであれば最低650点以上、英語を日常的に使うポジションや外資系企業なら750〜800点以上は取得しておきましょう。企業やポジションによっては、900点以上が必須のこともあります。
難易度
TOEIC自体は合否がないので誰でも受験できますが、750〜800点以上を狙うのであれば難易度はやや高めです。
2019年度の公開テストデータでは、全受験者のうち
- 645〜694点を取得したのが9.4％
- 695〜744点が8.3％
- 745〜794点が7.1％
- 795〜844点が5.8％
- 845〜894点が4.1％
- 895点以上が3.6％
でした。
試験頻度
年間10回（各回 午前・午後に分けて開催）
受験費用
7,810円（リピート割引受験料 7,150円）※2022年11月現在
TOEIC公式サイト：https://www.iibc-global.org
2. 英検
公益財団法人・日本英語検定協会が実施している英語資格で、日本ではTOEICに並んで知名度が高い英語資格です。
5〜1級まで7つのレベルに分かれていて、合否で結果が出ます。3級以上は一次試験と二次試験に分かれており、リスニング・リーディング・スピーキング・ライティングの4技能の能力を測る試験です。
転職に必要な級の目安
転職で英語力をアピールするなら、最低でも2級以上は取得しておきましょう。日常的に英語を使うポジションへの転職なら、準1級以上は欲しいところです。
難易度
- 2級は高校卒業レベル、
- 準1級は大学中級レベル、
- 1級は大学上級レベル
と言われています。
2015年を最後に合格率は公表されていませんが、2級が26.4％、準1級が16.0％、1級が12.0％でした。
英検はリスニングとリーディングのみのTOEICと異なり、スピーキングとライティングにも時間を費やさなければならないので、社会人が合格を目指すのはややハードルが高め。
また、年に3回しか試験がないので、「転職のために取得しよう！」と思ってもすぐに受験できるとは限らず、挑戦の難易度も高めです。
試験頻度
年間3回
受験費用
2級：8,400円
準1級：9,800円
1級：11,800円
※2022年11月現在
英検公式サイト：https://www.eiken.or.jp/eiken/
3. TOEFL
アメリカの非営利教育団体・ETSが開発し、英語を第二言語とする人を対象として実施されるテストです。
英語圏の大学・大学院に入学する際の言語力評価基準となっていて、世界的にも知名度が高いです。アカデミックな英語力が求められ、リスニング・リーディング・スピーキング・ライティングの4技能を測定します。
日本で個人受験可能なのは、パソコンで受験するTOEFL iBTのみです。TOEICと同じように合否ではなく、スコアで結果がわかります。
転職に必要なスコア目安
TOEFL iBTはリスニング・リーディング・スピーキング・ライティング各30点で120点満点となっていて、スコア60〜78点で英検準1級、94〜101点で英検1級と同等と言われています。
日常的に英語を使うポジションへの転職なら、最低でも60点以上は目指しましょう。ちなみに外務省の専門職員は100点以上が求められています。
難易度
スコア60以上を目指す場合は、今回紹介する英語資格の中でも難易度が高め。アカデミックな表現や単語を理解している必要があります。
試験頻度
年間50日以上（土日開催）
※受験間隔を中3日空けなければならない
受験費用
US$245 ※2022年11月現在
TOEFL公式サイト：https://www.toefl-ibt.jp/
4. IELTS
イギリスの公的国際交流機関であるブリティッシュ・カウンシル、IDP：IELTSオーストラリアとケンブリッジ大学英語検定機構が共同運営しており、日本では日本英語検定協会が実施しています。留学・移住・就労に特化した英語資格です。
ヨーロッパを中心に知名度の高いテストで、国によっては移住時のビザ取得でIELTSのスコアが必須となります。スコアは1.0から9.0までの0.5刻みです。
留学に特化したアカデミック・モジュールと、留学以外の目的や、カナダ・オーストラリア・ニュージランドの移民申請のためのジェネラル・トレーニング・モジュールがあります。
転職に必要なスコア目安
履歴書でアピールする英語力のためならオーバーオール5.0以上、海外移住を視野に入れた転職ならオーバーオール6.0〜6.5以上を目指しましょう。
難易度
オーバーオール5.0なら英検2級から準1級レベル、5.5〜6.0なら準1級から1級レベルです。
TOEFLと比較されることが多いIELTSですが、アカデミックなトピックがTOEFLより多くないので、比較するとIELTSの方が難易度は低めといえます。
試験頻度
ほぼ毎週末（アカデミック・モジュールのみの回もあり）
受験費用
コンピューター形式：26,400円
ペーパー形式：25,380円
※2022年11月現在
IELTS公式サイト：https://www.eiken.or.jp/ielts/
5. 日商ビジネス英語検定（※現在リニューアル中）
日商ビジネス英語検定は、日本商工会議所と各地商工会議所が実施している英語資格で、ライティングスキルに特化しています。
貿易取引実務におけるEメールやビジネス文書などに関する問題が出題されます。3〜1級があり、各級とも70点以上を取れば合格です。貿易事務に携わりたい人におすすめです。
転職に必要なスコア目安
転職でアピールするためには、2級以上の取得を目指しましょう。
難易度
ライティングに特化したテストで、2級であればTOEIC600〜700程度の英語力と言われているため、それほど難易度は高くありません。
ただ、金融・為替・法制度などの専門的な知識を身につけている必要があります。
試験頻度
3級・2級：試験会場ごとに異なる
1級：年2回
受験費用
3級：4,200円
2級：5,240円
1級：7,330円
※2022年11月現在
日商ビジネス英語検定公式サイト：https://www.kentei.ne.jp/35516
※現在試験内容およびホームページをリニューアル中。
転職目的別のおすすめ資格・試験
どのような企業への転職を目指しているかによって、おすすめの英語資格・試験は変わってきます。
目的別に紹介しますので、受験する英語資格を決める上での参考にしてみてください。
国内日系企業への転職なら
国内日系企業への転職を目指すなら、TOEICがおすすめです。
国内にある日系企業の中には、TOEICを英語力の評価基準としている企業が多くあります。2019年度に年間830,954人が受験したTOEICは、英語資格としての知名度も抜群。年間10回試験があるので、受験しやすいのも特徴です。
2019年度のTOEIC公開テスト平均スコアは、全体で588点、社会人では612点でした。
英語を使用しないポジションへの転職で英語力をアピールする場合でも、平均点を上回る650点以上は欲しいところです。英語を使用するポジションなら、750〜800点以上を目指しましょう。
国内外資系企業への転職なら
国内にある外資系企業への転職の場合も、TOEICがおすすめの英語資格です。
世界的に見ると知名度が高いと言える資格ではないのですが、国内にある外資系企業なら国内日系企業と同じように、TOEICを英語力の評価基準としている企業は多くあります。応募の必須条件にTOEICスコアを設定している国内外資系企業も少なくありません。
外資系企業への転職を目指すなら、最低でもTOEIC800点は取得しておきましょう。ポジションによっては850〜900点以上を超えないと、英語力がないとみなされてしまうこともあります。
海外への転職なら
海外への転職でおすすめの英語資格はIELTSです。
英語圏の国での知名度が高く、多くの国で英語力評価に採用されているので、海外に転職する際の英語力アピールには最適。IELTSはイギリスで生まれた英語資格ですが、イギリス英語以外の英語に関しても幅広く出題されます。
同じように英語圏での知名度が高い資格にTOEFLがありますが、こちらはアメリカ英語のみの出題。海外に転職するとさまざまな国の人と接する機会がありますから、グローバルな英語の能力を測れるIELTSの方が、TOEFLよりもおすすめです。
海外への転職を目指してIELTSを受けるなら、オーバーオール6.0〜6.5以上を目指しましょう。これはカナダ・オーストラリア・ニュージーランドに移民申請する際に求められるスコアと同等です。
まとめ
転職時に英語資格が必要な理由や、英語資格を取得するメリット、転職を目指す上でおすすめの英語資格について解説しました。
実際の業務では資格の有無よりも実践的な英語力が求められますが、書類選考や面接の段階で英語力をアピールするためには英語資格を持っておいた方が断然有利です。
英語資格を取得すれば、転職で挑戦できるポジションを増やすことや、転職後の可能性を広げることに繋がります。
今回紹介した5つのおすすめ英語資格や転職目的別のおすすめ英語資格を参考に、どの英語資格の取得を目指すか検討してみましょう。努力して英語資格を取得すれば、必ず転職時の武器になります。
どの資格を取得するか迷ったら、国内での知名度が圧倒的に高いTOEICから受験してみましょう。
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