皆さんこんにちは!英語コーチ・TOEIC講師の星名亜紀です。専門学校の学生や社会人の方に、TOEICレッスンや英語学習のサポートを行っています。
英語コーチをしている中で多くのTOEIC学習者さんのお悩みを伺ってきましたが、「リーディングパートの時間が足りなくて読み終わりません!」という方は非常に多いです。
公開テストのあった日は必ず、「最後の10問がまた塗り絵(勘でマークすること)になってしまいました……」というようなお声もいただきます。
今回の記事では、TOEICの時間が足りない」問題について、スコア別に目安となる時間配分や対策方法、時間が足りなくなることによるありがちなミス、そして大切なマインドセットなどをお伝えしていきたいと思います。
今度こそは全問完走したいと思っている方や、タイムマネジメントをばっちりして少しでも多くの問題を解き終わりたい方はぜひ最後まで読んでみてくださいね。
この記事を書いた人
星名 亜紀
大学卒業後、客室乗務員として全日本空輸株式会社入社。その後外資系企業を経て、現在は英語講師として専門学校のエアライン科で指導をしたり、英語コーチとして活動。4カ国での留学経験あり(アメリカ、カナダ、オーストラリア、フランス)。TOEIC L&Rテスト990点。英検1級。
この記事を監修した人
セレン
留学経験、海外経験ゼロから31歳で英語学習を独学で開始しTOEIC LR満点、TOEICスピーキング満点、英検1級を取得。日本最大手IT企業にてTOEIC研修&英語学習カウンセリングを6年間担当。英語事業コンサルティング、高校生英語指導も行う。「英語のあたらしい読みかた」著者。
そもそもTOEICテストは時間内に最後まで解くべきか?
結論からお伝えすると、リーディングパート100問を時間内に全て解き終わることを目指すべき人は、受験者のうち900点以上の方のみです。
IIBCのホームページに掲載のあるスコア分布を見てみると、公開テストで900点以上を取得するのは全体の5%程度。そうでない方は、時間が足りなくなっても気にせず、「最後まで解き終わらなくて当たり前!」と気持ちに余裕を持って取り組みましょう。
皆さんもご存知の通り、英検と違ってTOEICは全受験者が同じ問題を受けています。英検であれば4級、5級を受けるレベルの方も、1級、準1級を目指している方も同じ問題です。ですので、特にTOEIC初級・中級者の方は全ての問題を解く必要はなく、自分が解くべき問題、そして自分が正解すべき問題を知ることが大切なのです。
とは言われても、どの問題を解き、どの問題を捨てるべきか判断ができないという方もいらっしゃると思います。そのような方は、まず『TOEIC L&Rテスト 目標スコア奪取の模試』 に取り組んでみると良いでしょう。
例えば、600点を目指す学習者であれば、Part3&4の意図問題やPart5の語彙問題は「捨て問」というように、目標スコア470/600/730/860/990 別に、どのような問題を「捨て問」もしくは「奪取すべき問題」とすべきか明記されています。
TOEICリーディングパートの理想的な時間配分【目標スコア別】
900点以上の学習者でなければ、全問解き終わらなくても気にしなくて良いということをお伝えしましたが、だからと言って好きなだけ時間をかけてゆっくり解いて良いというわけではもちろんありません!
ここからは、目標スコア別(600、700、800点)に、リーディングパートの理想的な時間配分をお伝えしていきたいと思います。
目標スコア600点のためのおすすめ時間配分
- Part5=15分
- Part6=15分
- Part7=45分
TOEIC600点を目指す方がまず得点源とすべきなのはPart5です。
よく参考書やSNSでは「Part5は1問20秒を目安に、合計10分で解きましょう」と書かれていますが、これは600点を目指す皆さんにはかなりハードルの高い時間制限です。時間に追われるがあまり、本来取れるはずの問題を焦って解き、間違えてしまうという……という失敗をしてしまう可能性があります
したがって、Part5は15分を目安にしてください。
ただし、時間に限りはあります!Part5はわからない問題はいくら考えてもわからない問題が多いので、3回読んでもわからない問題はすぐに勘で答え、次に進みましょう。
また、Part7に関しては、最初からシングルパッセージまで(Q175まで)をゴールとし、残りは塗り絵をするつもりで問題ありません。もし余裕があれば、英文全体を読まなくても前後の一文を読めば正解できる可能性のあるマルチプルパッセージの言い換え問題(同義語問題)に挑戦しましょう。
目標スコア700点のためのおすすめ時間配分
- Part5=12分
- Part6=10分
- Part7=53分
Part5に関しては、品詞問題などの空欄前後でパッと判断し、全文を読まなくても解答できる問題で時間短縮できるよう心がけましょう。例えば、
冠詞( )名詞
とくれば、空欄には基本的に形容詞が入りますし、
前置詞( )前置詞
であれば、空欄には名詞がくると、全文を読まなくてもわかります。ここで時間短縮をする分、前置詞や接続詞の問題、動詞問題など文全体を読むべき問題に時間を回すことができます。
また、Part6は空欄に当てはまる文を選ぶ問題が各英文に1問、合計で4問あります。それらの問題は、トライしてみたものの選択肢が絞りきれない場合は塗り絵で構いませんので、それ以外の問題に時間をかけましょう。
Part7に関しては、最初からマルチプルパッセージの二つの文書問題まで(Q176〜185)をゴールとし、残りは言い換え問題以外、基本塗り絵をするつもりで大丈夫です。
目標スコア800点のためのおすすめ時間配分
- Part5=10分
- Part6=10分
- Part7=55分
800点を目指す方はPart5、6に関しては全問、Part7は最後の10〜15問程度を除いて完走できるペースで取り組みましょう。
すでに800点を目指すレベルの皆さんの多くは、リーディング問題の完走を目指していらっしゃると思います。しかし、そこを目標にする必要はありません。
私の場合、920点くらいの時にもまだ最後のセットの5問が解けたり解けなかったり…… という感じでした。つまり、最後の5〜10問は時間が足りず勘で答えても、そこにたどり着くまでの問題での正答率が高ければ十分に900点に届くということです。
これまで多くのTOEIC学習者さんを指導してきた経験から、おすすめのスコア別時間配分をご紹介しましたが、お一人ひとり得意不得意は異なりますので、こちらを参考にしていただきご自身にとってベストな時間配分を見つけてください。
Part7で意識すべきことは?
次に、皆さんが一番時間が足りなくなると感じているPart7で意識すべきことについてお伝えしたいと思います。
Part7の時間配分は、目標スコアや得意不得意によって異なりますが、900点以上で完走を目指すレベルであれば1問1分が目標です。しかし、700点〜800点くらいを目指す方であれば、ダブルパッセージは問題数プラス1分で合計6分、トリプルパッセージはプラス2分で合計7分くらいを目安にしましょう。
Part7を解くときに時間にこだわりすぎて、時計をチェックしすぎるのは逆にご自身を焦らせてしまうことになりますので精神的によくありません。私も、Part7のシングルパッセージが終わった後1回、そしてQ196〜200の最後のセットに取り掛かる前辺りで1回、時計を確認するくらいで解いています。
リーディングパートで時間切れになるありがちな原因
ここからは、私の失敗談も含め、TOEICのリーディングパートで時間切れになってしまう原因を見ていきたいと思います。
一つの問題にこだわり、時間をかけすぎてしまう(特にPart5)
特にPart5でありがちなのが、一つの問題に時間をかけすぎてしまうことです。Part6や7のように時間をかければ解ける可能性の高い問題と異なり、Part5の場合は、 “知っているか知らないか” で決まる問題が多くあります。つまり、どんなに考えても回答に必要な知識がなければわからないのです。
しかし、私たちはつい、「もう少し考えたら解けそうな気がする」と思ってしまう傾向にあり、時間をかけると「こんな時間をかけたんだから絶対正解したいし、もう少しだけ考えてみよう」という沼にハマりがち。
Part7で時間が足りないと思っている方も、よくよく調べてみると、Part5の時点ですでに目安とすべき時間から遅れをとっているケースがよくあるので、一度ご自身のPart5の時間配分を見直してみましょう。
速く読むことを意識しすぎている
私がまだ満点を取れるまでによく犯していた失敗が、速く読むことばかりを意識していたこと。
「速く読むこと」の優先順位が上がると、しっかりと意味が取れていないのにどんどん進んでしまったり、長文読解は基本的に最初から最後まで全ての英文を読むことが大切なのに、勝手にここは必要ないだろうと判断し、飛ばし読みをしてしまったりということが発生します。
スピードはアップしているので、英文を一応読み終わるまでの時間は短縮されますが、結局意味が理解できていなければ設問を解く際に、「あれ?これどこに書かれていたかな」と再度英文に戻り読み直すことになります。これは非常に時間の無駄です。
自分の解くべき問題を把握できていない
英検と違い、TOEICはさまざまなレベルの問題が混在しているので、自分が正解すべき問題を把握することが大切です。
Part5であれば、まず正解してほしいのは品詞問題や動詞の問題、前置詞・接続詞の問題です。逆に、Part6の正しい文章を選択する問題や、Part7の文章の位置を選択する問題は難易度も高く、スコアによっては「捨て問」として良い問題。
最初のうちは、ご自身の解くべき問題の把握が難しいと思いますので、まず一度、先ほどもご紹介した『TOEIC L&Rテスト 目標スコア奪取の模試』に取り組んでみましょう。
600点を目指す方が、900点以上の人が挑戦すべき問題に大切な時間を費やしてしまっていてはスコアアップに繋がりませんし、本来の実力を発揮できませんので、自分の解くべき問題をしっかりと把握しておきましょう。
【目標スコア別】スコアアップにつながるリーディングパートの勉強法
それでは、目標スコア別にリーディングパートのスコアアップ勉強法をご紹介していきたいと思います。
TOEIC600点を目指す方はまずはPart5から
600点を目指す方は、まずはPart5に取り組みましょう。Part5の中でも特に優先的に対策をすべきなのは品詞問題、動詞問題、前置詞・接続詞問題です。語彙・語法の問題は難問が多いので今の段階では重点的に学習する必要はありません。
品詞や動詞の知識はPart5だけでなく、リスニングでもリーディングでも全ての基礎となる知識です。解説を読んでわからないものがあれば納得するまで総合英語の参考書で調べたり、インターネットで検索したりしてみましょう。
Part5の問題は「正解がわかったら良し」とするのではなく、ご自身でも正解の根拠を説明できるくらいまで理解しましょう。
また、正解の選択肢を入れた完成文をスラスラ読めるようになるまで音読するのも効果的です。一見遠回りのように見えますが、この学習のおかげで問題を解くスピードはグーンとアップしますし、正答率も上がります。
TOEIC700点取得には毎日の精読の習慣を
600点を突破した皆さんは、基本的な英文法の知識はすでにお持ちだと思います。そんな皆さんが次に700点を取得するために取り組むべきなのは、毎日英文を精読する習慣をつけることです。
「多読」「速読」「精読」など、いくつかのリーディングのアプローチがありますが、効果的にこれらの学習法を取り入れるには順番がとても大切です。
時間内に完走することだけを目指してとにかく速く読む練習をしたり、しっかり内容も構文も理解していないのに新しい問題をひたすら読んだりする方がいらっしゃいますが、最初に取り組むべきは「精読」です。
たくさんの英文に取り組む必要はありませんので、まずは「これ!」と決めた長文を一つPart7から選び、下のステップに沿って英文の精読に取り組みましょう。
精読をする時に、きれいな日本語に訳そうとはせず、前から英語の語順のままで訳していく癖をつけることが重要です。きれいな日本語の語順で訳す癖がついているといつまでもスピードアップができません。
また、速読をするときにやりがちな、飛ばし読みもNGです!虫食い状態で英文を読んでいくと、そこにちょうど正解の根拠が書かれていた場合、再度同じ英文を読み返すことになり大きなタイムロスとなります。
繰り返しになりますが、新しい英文をたくさん読むのではなく、同じものを繰り返し丁寧に読み込んでいきましょう。必ず力がつくはずです。
TOEIC800点突破のためには、本番のように繰り返し模試を解こう
TOEIC800点を目指して学習中の方は、模試スタイルの問題を時間を計って本番のように解きましょう。
目的は二つ。一つ目は700点取得のための学習法でもお伝えした「精読」の延長線上にある「多読」にも積極的に取り組み英文読解力をつけるため、そして、ご自身にベストな時間配分を確立するためです。
模試は同じもので構いませんので、何度も同じ200問(リーディングだけの場合は100問)を解きましょう。全問正解できるようになったら終わりではなく、そこからがスタート。
公式問題集1冊の2回分の模試があれば2〜3ヶ月でも十分すぎる問題量です。好みにもよると思いますが、精読や多読をする際には音読をすると内容理解も深まるでしょう。
また、先ほど800点取得のための時間配分はPart5 10分 / Part6 10分 / Part7 55分とお伝えしましたが、一人ひとり得意不得意が異なるので、自分にとってのベストな時間配分は自分で繰り返し解いてみることでしか確立できません。
何度も繰り返し解いていると、「このくらいのペースで解けばPart5は10分で解き終わるな」とか「少しこの長文には時間をかけすぎているからもうそろそろ次にいかなくては!」という感覚が掴めてきます。
模試200問を解くのは時間もかかり負担が大きいのでつい先延ばしにしてしまいがちですが、私の場合は、あらかじめ1ヶ月分を「この日にどの模試を解く!」と具体的に決め、手帳に書き込んでおくようにしています。
リーディングパートを試験本番で効率よく解くために、すぐできる対処法やコツ
最後に、TOEIC試験本番で使えるリーディングパートのスコアアップテクニックをいくつかご紹介したいと思います。
試験終了まであと5分!残りの時間で解くべき問題は?
毎回残り時間が少なくなると焦ってしまい、Part7の英文を読んでも全然頭に入ってこない!という状況に陥る方も多いのではないでしょうか。残り時間があと5分になった時点でまだ残っている問題が多くある場合は、正解できる可能性の高い問題を優先して答えましょう。
- 同義語言い換え問題
→ そのワードの使われている一文、またはその前後を少し読んだだけで正解できることが多いです。
- マルチプルパッセージであれば、設問に “Accoring to the article, ” のように正解の根拠が記されている問題
→ 2つまたは3つの文章がある中で、どこに正解があるか設問を読んだだけで分かるのは大きなヒントです。
逆に避けるべき問題は、NOT問題。正解ではないものを選ばなければいけないので、正解となる3つの根拠を探すことになります。3つの根拠が文章に散らばっていることも多いので、広範囲を読むのに時間がかかります。
設問で難易度が判別できる!
Part7を解く時には、皆さん先に設問を読むと思います。たくさん問題を解いていると気づくと思うのですが、設問にはいくつかのパターンがあります。
その中で “most likely(おそらく)” とか “What is suggested〜(何が暗示されているか)” のようなワードが出てくる問題は、正解の根拠がズバリ書かれていないことがあるので難易度が高めです。
また先述のように、NOT問題と呼ばれる、正解ではないものを選ぶ問題も、4つのうち3つ正解の根拠がわからないといけないので時間がかかってしまうことが多いです。残り時間が少なくなってきた時には、これらの問題以外に挑戦する方が正答率は上がるかもしれません!
800点を目指す方は、解く順番を変えてみる(ことを検討する)
もう一つトライしても良いかなと思うことは、解く順番を変えてみること。
ほとんどの方がリーディングはPart5、6、7の順番で前から解いていると思います。私も900点くらいまでは、それしか選択肢がないと思っていたのですが、ある時Part7から解くようにしてみたところ、順番を変えただけでリーディングのスコアが伸びたのです。
おそらく理由は、Part5から先に解くとつい時間に余裕があると感じて慎重に解いてしまい、余計な時間を使っていたこと、Part7に辿り着く時にはすでに脳が疲れ切っていて長文を読むのが苦しくなってしまっていたことです。
Part5は知っているか知らないかで正解を出せるか否かが決まる問題が多いので、脳が疲れていてもそこまで苦戦しないのですが、長文読解に関しては脳が疲れ切っていると集中力も低下し、正答率が少し下がっていました。
まとめ
さて、今回の記事では、TOEIC試験での「時間が足りない!」問題について書いてみました。
最後に時間短縮のためのテクニック的なこともご紹介しましたが、大切なことはテクニックに頼るよりも、
- 目標スコア600点であれば文法知識を確実なものにする
- 700点であれば精読を毎日の習慣にする
- 800点であれば精読だけでなく多読や速読も取り入れ英文読解力をつける
- 本番のように模試を解くことで自分にベストの時間配分を確立する
など毎日の地道な学習によって実力をつけていくことです。
また、「そもそもリーディングパートを完走する必要はないんだ!」という気持ちを持って、自分が解くべき問題を確実に正解していくことを意識してください。本記事の内容を、これからの学習の参考にしていただけたら嬉しいです。
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